CASE.6

その悩み、印刷で解決できるんだ…

お客様の種類:デザイナーご利用事業の種類:カタログ製作

私たちは仕事柄、デザイナーさんから印刷の依頼を受けることも多くあります。

この日も、女性デザイナーさんからとある家具メーカーのコンセプトBOOKの印刷依頼を受けました。その家具メーカーの主力商品は若き伝統工芸士が手がける桐箪笥。上品で、格式のある、とても素敵な商品です。

その上質な空気感を表現するために表紙に桐の木目を浮かす加工ができないかデザイナーさんと打ち合わせをしていました。

そのとき、デザイナーさんが持ってきたデザイン見本を見ていて気になることが…それは、冊子の一番最初のページ。
うすい紙に万年筆の手書きタイトルがあって、それをめくると原稿用紙があってタイトルのページに原稿用紙のマス目が透けて見える仕様になっていました。

うん? 待てよ。これって…

その仕様に、ほんの少しの違和感を感じたので、思い切って言ってみました。
「この部分、ちょっと重たい印象じゃないですか?」
すると、デザイナーさんがそうなんです!
と食いぎみに迫ってきました。

彼女が表現したかったのは、原稿用紙に手書きでタイトルを書いているイメージ。タイトルの字を際立たせるために、うすい紙に書いて、裏に原稿用紙を挟んでいました。

ただ彼女自身、その仕様にしっくりきていなかったようなんです。
「これ、他に方法があるかもしれませんね」
印刷人としての経験と直感が働きました。

本当ですか?と彼女は目を輝かせます。
デザイナーさん的には、これしか方法がないと思っていたようなのですが、
それが、印刷で解決できるとは…

だから彼女は、あえて打ち合わせ中でもタイトルページに関しては触れていなかったのですが、お互いに「いいものを作りたい」という想いの中で、潜在的な琴線にふれて、心が通じあうことができた。

それは、印刷人として本当に極上な瞬間ですね。
でも、そこからは本当にできるのか…プレッシャーとの戦い(笑)。

私たちが提案したのは、紙の裏に原稿用紙のマス目を、表にタイトルを印刷する方法です。ただ、ある程度の濃さがなければ表面にマス目が透けて見えません。
でも濃くすればするほど、裏面の主張も大きくなっていきます。

何度も試行錯誤を重ねるなか
「いや、表面に薄くマス目を印刷すれば?」
という声もあがりました。

でも、そうなると彼女が目指す世界観を表現できないのです。
紙と字の遠近感があるからこそ、タイトルの字が際立ち、独特の雰囲気が出るのです。

そこで、思いついた方法が裏面に刷ったマス目を隠蔽するために白いインクを薄く重ねていくこと。この白インクの重ね塗りも、一発で決まるわけもなく、薄く何度も重ねて仕上がりをチェックしました。

ただ、紙自体も薄いので、何度も印刷機を通すことはできません。
何度も、何度も、刷り直して、気がつけば深夜。日付も変わろうか、という時間になって、とうとうイメージ通りの刷り上がりが完成しました。

普通に考えれば、デザイナーさんが考えてきた仕様をそのまま刷るのが印刷屋としては一番簡単です。
でも、私たちは印刷でお客さんを驚かしたいし、喜んでもらいたい。
まぁ大前提として、印刷という仕事が大好きというのはありますけど…

結果、デザイナーさんからもこれまで手がけた冊子モノの中で一番イイ!
とおっしゃっていただけました。
やっぱり、いいモノづくりって、面白いものですね。